精神科の本や記事は難しくてわけがわからない
精神科の本や記事は難しくてわけがわからない
ほとんどの方はこのように思うのではないでしょうか。
このブログでは、細かい例外的事項には触れずに、基本的なことを非常に簡潔にわかりやすく書くことを心がけています。
専門用語の羅列や長すぎる専門書のような記載は正直読み切れる気がしないという方は是非お読み下さい!
今回は【精神症状】についてお話したいと思います。
精神症状とは考えややる気、感覚のように、ヒトが持っている精神機能にあらわれる症状を指します。
精神医学では精神症状を9つに分類し、それらを感覚の異常、メンタルの異常、能力の異常の3つにカテゴリー化しています。
☆感覚の異常
①知覚の異常:感覚の受け止め方や存在しない感覚の異常
例:錯覚
☆メンタルの異常
②思考の異常:思考の流れや内容の異常
例:妄想、滅裂思考
③自我意識の異常:自分が自分でないような症状
例:離人症、させられ体験
④感情の異常:喜怒哀楽や快・不快感の異常
例:不安障害
⑤意欲や行動の異常:精神的な欲動や生存のための欲望の異常
例:過食症
⑥意識の異常:集中力の低下や意識混濁の症状
例:うつ病に合併した集中力の低下
☆能力の異常
⑦知能の異常:IQや思考能力の異常
例:認知症、生まれつきの知的能力障害
⑧記憶の異常:覚えること、思い出すこと、頭にとどめておくことの異常
例:健忘
⑨巣症状(そうしょうじょう):脳障害による異常
例:失語、失行、失認
【知覚の異常】について
人間の感覚は大きく五つ、五感という五つの感覚に分けられます。
視覚・触覚・聴覚・味覚・嗅覚の五つは聴いたことがある人も多いかもしれませんね。
この感覚に異常が生じるのが知覚の異常というものです。
「知覚」は医学的用語で、「感覚」は一般的な用語だとお考え下さい!
原因は?
人間は感覚を知覚神経という神経で認識しています。
もし知覚の異常を認めた場合は、神経学的な異常が隠れているのか、精神的な問題なのかを正しく見極める必要があります。というのも、脳腫瘍や脊髄病変のような大きな病気が隠されているのに「気のせいだ。精神的な問題だ。」と片付けられると、生死に関わることがあるからです。
そのためにも、まずは私を含め医師のような専門家にご相談するのが一番です。
種類は?
知覚の異常は、大きく分けて錯覚と幻覚にわかれます。ここでは性状なものと比較して見ていきましょう。
・知覚
(例)電柱を見て電柱だと思う。
⇨正しく知覚している状態
・錯覚
(例)電柱を見て人だと思う。
⇨間違えて知覚してしまう状態
・幻覚
(例)何もないところに電柱が見える。
⇨何もないのに知覚してしまう状態
【錯覚】について
錯覚とは知覚の異常の一つで、多くの精神疾患でみられる症状になります。
簡単に表現すると、間違えて知覚してしまう状態をあらわします。
錯覚とは
錯覚とは、対象物が存在し、それを間違えて知覚することです。
見間違いや聞き間違いに近いものですが、そのように感じない場合もあります。
例えば、電柱を見て人だと思うような状態が錯覚といえます。
どう受け止めたらいいのか
ご本人が感じたことは、それが錯覚であったとしてもご本人の中では事実なので、否定する必要はありません。
そのように感じたのだということを、否定することなく受け止めましょう。
きく医師側、カウンセラー側も同様です。私はその場にいなかったのでわかりませんが、そのように感じたのですね、と否定することなく受け止めましょう。
【幻覚】について
幻覚は多くの精神疾患でみられる知覚の障害で、なにもないのに感じてしまうというものです。
しかし大切なことは、幻だとしてもご本人にとっては本当のことであるということです。
例・傾聴
例えば幻聴であれば、なにもないところから声が聞こえてくることをさすので、単語としては空耳と同義と思って良いでしょう。
ただご本人にとっては「本当に聞こえた」と強く主張されます。それを「そんなことはない」と真っ向から否定することはあまり良くありません。「そう聞こえたのですね」とまずはご本人の話をよく聞くことが大切です。
種類・大切なこと
幻覚には幻聴や幻視、体感幻覚などがあります。どのような幻覚であれ、まずは否定することなく、ご本人の訴えをきき、何が一番つらいのかを傾聴しましょう。
【幻聴、幻視、体感幻覚】について
幻聴とは統合失調症を代表として、他にも解離性障害など多くの精神疾患でみられる幻覚の一つです。
なにもないところから聞こえてくるという状態ですが、多くの場合は自分のことを罵倒する言葉ばかり聞こえてきます。
どのような幻聴が起きるのか
精神科医が診察をしていると一番多く診る幻覚が幻聴ですね。
仮にもし好きなアイドルが「応援してるよ」と幻聴で聞こえてきたとしても、日常生活で困ることはありません。しかしほとんどの場合、聞こえてくる幻聴は自分に対する悪口や暴言、罵倒の声です。
幻聴によってどうなるのか
聞こえてくる悪口や暴言、罵倒の声というのは、ほぼ全て自分の行動を制限してくる声です。
「死ね」「バカ」「ブス」「デブ」「この世の全員がお前を嫌いだよ」というような声で、ご本人の不安感はたいへん大きなものになっていき、押しつぶされそうになってしまいます。
どうすればいいのか・どうしても仕方ないのか
治し方は、幻聴には必ず原因となっている精神的な負担や病気が隠れています。
その原因を正しく治療することで幻聴のような症状は改善を示します。
一方で、場所を変えても大音量で音楽をかけても幻聴は消えることはありません。
【幻視】について
幻視とはせん妄やレビー小体型認知症、器質性精神障害などではよく認められる幻覚の一つです。
簡単に表現すると、なにもないのにリアルな幻が見える状態です。
幻視とは
アニメや漫画では、能力や技によってキャラクターが分身してみえるようなものもありますが、幻視の場合は、実際にはいない人や動物、虫が見える場合が多いです。
ご本人に詳しく伺うと、「目の前に黒い服を着た人が立っていて、じっと私を見ています」のように、非常に具体的であることが多いです。
なぜ幻視が起こるのか
幻視が認められる精神疾患はそこまで多くはありません。
日常診療していても、アルコール依存症の人がお酒をやめた時、認知症の中でもレビー小体型認知症、覚醒剤のような違法薬物、頭部外傷や重症な入院患者様のせん妄症状など、やや特殊な場合が多いです。
気づき方・治し方
前述の通り、幻視は通常の人にはなかなかみられない症状なので、認められた場合には明らかな原因があることが多いです。
ご本人は、それが幻視だと分かっている場合もあれば、幻視だと全く分かっていない場合もあります。
周りにいて違和感を感じることが多い場合には、気のせいで済まさずに詳しくご本人に聞いてみたり、医師や病院にたずねてみるのがいいですね。
原因となる疾患の治療により、幻視症状は改善していくことが多いです。
【体感幻覚】について
体感幻覚とは統合失調症でよくみられる症状の一つで、体に感じる幻覚のことを指します。例えば「包丁が背中に刺さっている」のような訴えを認めることがあります。
症状・訴え
体感幻覚とは体に感じる幻覚のことです。例えば医師のもとに、「包丁が背中に刺さっています。治してください。」と訴える方がくることがあります。
本当に刺さっていれば救急対応しますが、背中を見ても包丁が刺さっていない場合は体感幻覚になります。
訴えには多彩なものがあり、「体に穴があいています。」、「脳が何者かに触られています。」などの訴えがあります。
対応の仕方・治療
ご本人は本当に包丁が背中に刺さっていると感じているので、否定しても解決には繋がりません。
まずはご本人の辛さを受け止めることが大切になってきます。
治療としては、根本的な原因となる疾患が隠れており、多くの場合それは統合失調症であるので、その根本となる疾患の治療をすすめていくのが体感幻覚の治療につながります。
【思考の障害】について
思考の流れや順序がおかしくなることを思考過程の障害、思考の内容や体験がおかしくなるのを思考体験の障害といい、思考の障害はこの2つを合わせた用語になります。
症状は?
思考の障害が強いと、まともに会話ができない状態になります。軽度の思考障害では、病的とは思われなくとも変な人だと周囲に煙たがられることが多いでしょう。
原因は?
次回以降の記事で記載していきますが、躁うつ病や統合失調症、うつ病、認知症、不安症、強迫性障害など多岐にわたります。
というのも、下記の通り、思考の障害には多くの種類があるためです。
どの種類の思考障害なのかにより、原因や治療、対応が変わってきます。
種類は?
まずは、その目次のような感覚で記載しますね。
- 観念奔逸
- 滅裂思考
- 思考制止
- 思考途絶
- 思考化声(考想化声)
- 迂遠
- 保続
- 支配観念
- 強迫観念
- 作為思考
- 思考吹入
- 思考伝播
- 妄想
- 一次妄想
- 妄想気分
- 妄想知覚
- 妄想着想
- 微小妄想
- 心気妄想
- 貧困妄想
- 罪業妄想
- 誇大妄想
- 被害妄想、関係妄想
- 注察妄想
- 被毒妄想
- 追跡妄想
- 嫉妬妄想
- 憑依妄想
- 物理的被害妄想
- 一次妄想
治療は
原則は知覚の障害と同様に、きちんと話を聴くことです。
周りの人は、ご本人の考え方に驚いて顔に出てしまい、それがご本人へ伝わってしまうことがあります。
顔に出やすい方は、マスクをして接するのもいいかもしれません。
【観念奔逸】について
観念奔逸とは躁状態などでみられる症状の一つで、話題が次々に脱線して言いたいことにたどり着かない状態をいいます。
部分的に関連性がある話が次々と続いていきながら脱線していきます。
どういう状態?
みなさまも、友人とおしゃべりをしていてテンションが上がったときに話が脱線していく経験はありませんか?その状態と非常によく似ています。
例をみてみるとわかりやすいと思います。
治療や対処法については前回の記事で説明しているので、短いですが観念奔逸の会話例を出して終わりにしたいと思います。
「ゴールデンウィークに旅行で日光東照宮に行ったんだ。日光東照宮みて江戸時代の歴史もっと知りたくなったよ。江戸時代といえば徳川家康だよね。今の人で徳川って名字いるのかな。珍しいよね。こないだ珍しいケーキ食べたんだけど、星型だったんだ。どうやって作るんだろうね。元カレがケーキ職人だったんだけど、あの人今元気かな。」
「…旅行の話じゃなかったの?」
次回以降は同じ思考の障害である滅裂思考について詳しく説明していきますね。
ありがとうございました。